怪奇大作戦

「怪奇大作戦」は、1968(昭和43)年から翌69年まで、それまでのウルトラ・シリーズと同じ枠で放送されていた子ども向けの「空想科学もの」の物語です。やはり円谷プロの製作です。SRI=科学捜査研究所という架空の機関が、警察とともに事件を解決していく、探偵ものと合わせ技1本な感じのドラマです。

2007(平成19)年だったか、何の前触れもなく再放送され、なんだか唐突にリメイク版が放送され、その時はびっくりしましたが、できはオリジナルの方がぜんぜん上でした。きっと予算も時間も今回の方がはるかにゆとりがあっただろうに…まぁ、それだけオリジナルの出来がスゴいということなんだと思います。

オリジナルは全部で26本、ただ怖がらせようとするだけでなく、その多くの作品で、今日まで有効な解決策が見出されずにいる社会的な問題について、鋭い切り口で問題提起がなされている…というより、放っておくとこうなっちゃうよ、という感じで、今日の状況を予言したかのような作品群でもあります。

工場に働く、無口で孤独な青年が、無差別に、通り魔殺人を繰り返す第16回放送「かまいたち」、主人公には一言も台詞がなく、物語の中では、彼の”視線”というか、”眼の感じ”が強調されます。そして、犯行の動機は最後まで明らかにされません。

精神に異常をきたしていた犯人によって家族を惨殺された女性科学者が、そうした犯人によるの犯罪が無罪になる現代社会に復讐するために”狂わせ屋”を開業、依頼者を機械で一時的に狂わせて殺人を犯させ、罪に問われない殺人者を増産していくという第24回放送「狂気人間」…これは、現在、いわゆる封印作品となっていて、再放送もされませんし、発売されているDVDにも収録されていません。

核家族化の中、息子たちとも疎遠になり、孤独になった高齢の科学者が、子どもの代わりになるようにとつくった小型ロボットが、高齢者を大切にしない人々を殺していく第7回放送「青い血の女」。

ある山村に、合衆国の自動車会社が工場をつくるとして、土地買収騒ぎが起こる…ふるさとを護ろうとするおじいちゃんたちが、第二次世界大戦中に徴用された毒ガス工場で憶えたノウハウを活かして抵抗する第12回放送「霧の童話」…結局、おじちゃんたちは逮捕され、村は山津波に襲われる…そして、エンディング。立ち並ぶ工場群と、高速道路脇にひっそりと佇む石仏、そのかたわら、空を見つめる工員さんがひとりいて、事件のときSRIの捜査員と親しくなった少年を暗示させます。

多くの人々に顧みられなくなった京都の文化遺産を、それを愛している人々の中で護っていこうと、伝送装置をつかって盗み出す科学者。彼らは、ちゃんと筋を通していて、夜な夜なディスコ(この時代、クラブではありません)に出没しては、若者たちから「京都を売ってもいい」という署名を集めていた…これは名作の誉れ高い実相寺監督の第25回放送「京都 買います」…

いったいどっちが犯罪者だかわからなくなるような問題提起…あの頃だからできたのか、それとも彼らだからできたのか、あるいは子ども向け番組故のノーマーク、それで可能になったのか、視聴者であるところの、ごく普通の人々の責任を問う姿勢…

それにしても、約50年前、この番組でなされた問題提起をもっと真摯に受け止めていれば、今、いつくかの問題に、解決の道筋がついていたかもしれません。

たかが子ども番組なんて、番組に関わる方々こそ、そんなことは思っていないはずです。でも、それにしても凄い…何度もいいますが、正味20数分で、これだけのことを描くのです。ひたすら頭が下がります。

→ らいでんさんという方が運営していらっしゃる「怪奇大作戦」の資料サイトへ

↑ こりゃ凄い。まさに「怪奇大作戦」網羅…

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