人間の間

言葉には確かにトレンドがあるようです。流行語大賞的なメジャーなものだけじゃなく、ちょっとカルトな世界で用いられる言語にもトレンドみたいなものはあります。

「反知性主義」

僕が、この言葉を意識するようになったのは、たぶん森本あんりさんの著作「反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体」(新潮選書)だったと思います。今年(2015年)2月の発刊ですから、あれから半年ほど。あちこちで「反知性主義」を目にするようになりました。

この言葉、もともとは「ごく普通の市民が道徳的な能力を持ち、とりたてて教育を受けなくても、誰もが自然に発揮できるという平等思想」という意味を持っていたようですが、まぁ「ごく普通の市民が道徳的な能力を持ち)というところがたいへん怪しく、今は、なんとなく「学理に拠るよりも、圧倒的に自分の感覚、直感に拠る」ことを「反知性主義」というらしく、つまり反インテリな考え方を指すようです。

まぁ、街場にはよくあることだし、実業界の「立志伝中の人物」なんてたいていはそうだと思います。

けれども、安倍さんや麻生さん。大西英夫代議士あたりまではともかく、武藤貴也代議士、 礒崎陽輔首相補佐官あたりはエリートでインテリです。インテリなのに反インテリ? 難しいところです。

つまり、日本の学校教育における成績の良し悪しがインテリか否かを決める、その決め手にはならんということでしょう。思い出してみれば上祐史浩さんは早稲田大学高等学院、早稲田大学理工学部を経て、同大学大学院理工学研究科修士課程を修了、宇宙開発事業団(現:独立行政法人宇宙航空研究開発機構)に入った人。亡くなった村井秀夫さんは、大阪大学理学部物理学科卒業、同大学大学院理学研究科修士課程修了。中川智正死刑囚は京都府立医科大学医学部医学科卒業。土谷正実死刑囚は筑波大学を卒業後、筑波大学大学院化学研究科修士課程修了。林郁夫受刑者は慶應義塾大学病院に勤めるお医者さんで心臓外科の名医として石原裕次郎さん手術チームの一員でもあった人です。

つまり、本当に恐ろしいのは「俺の目を見ろ。何にも言うな」的な人物ではなく、一見、クールなインテリ風に見えるが、実は「学理より、理屈にならない衝動」を寄る辺に行動する人。安倍さんや麻生さん、大西英夫代議士よりも、この国の最高学府から、武藤貴也代議士、 礒崎陽輔首相補佐官みたいな人が現出し、そして、その人が選挙区ではとりあえず勝ち抜けてしまえるという現実。

そういった「反知性主義」が怖い。だからこそ、このタイミングで「反知性主義」にスポットが当たるようになったのかもしれません。

1933年、ドイツ議会はヒトラー首相の政府に「憲法に制限されない無制限の立法権」を与えました。1937年、この全権委任法は期限切れを迎え、新法の予定されていましたが、ヒトラーは「心理学的理由」からこの立法を拒否し、全権委任法の延長を決定した…

この国の今は、あの頃のドイツにとてもよく似ています。

確かに、人間が科学の範疇に捉えていることは森羅万象のうちのごくわずかです。でもね「学理に拠るよりも、圧倒的に自分の感覚、直感に拠る」はもっと怪しい。どんなに拙くったって科学の範疇で行うしかない。…やっぱり神の子はいないし、悟りを開けるものでもない…

そして、勉強ができるからって「知性主義」とは限らない現実。

ブランド信仰みたいに東大や京大、偏差値を信じるのではなく、それが難しくたって自分なりの尺度を持たないと。
僕らは面妖で不完全な人間の間に生きています。

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