戦前、パンとは無縁だった人が、戦後をパン屋からスタートさせる。占領軍の食糧部から廉価で小麦とベーキングパウダーを横流ししてもらえたからです。
そういう人だから高度成長期以降は学校給食のパンを独占し、会社を大きくします。
戦地から戻ってパン職人に復職した人はたくさんのお弟子さんを育てましたが、お店は小さなままでした。
戦前は軍部へ食糧を卸し、戦後は自衛隊を得意先にしている食糧問屋さんもいます。
うちのオフクロの親友に、東京大空襲ですべての肉親を失って、ヨコハマの親戚を頼って戦後を暮らした方もいます。それでも明るいおばちゃんで、今でもそのことが信じられないくらいです。
人間、全員が善人ではないし、全員が悪人でもない。
ただ、戦争は人々の地金を晒すものだ…そうは思います。
「地金と化の皮をあらはす風あり」当世書生気質 坪内逍遥