街は、あの頃より豊かになったのでしょうか

村松友視さんの「時代屋の女房」は1982年の直木賞受賞作品。まだ、どこの街角にも店主の顔があるお店があった時代の、東京の場末の商店街を舞台にしたファンタジーです。この頃、すでに僕は20歳になっていましたが、それ故に、あの頃の街についての記憶も鮮明で、ときどき今が夢の中なのか、あの頃の記憶こそが夢だったのか、ふっと考え込んでしまうことがあります(…いや、真面目にそんなことがあるんです)。

僕は学校に居場所を見いだせなくて、街場の喫茶店やスナックのマスターやママさん、その店の常連の先輩たちに救われました。もちろん、今の街場にあるのはフランチャイジーな珈琲ショップやハンバーガーショップなど、ショップ・スタッフと世間話をすることもなく、システマチックに金銭のやり取りをし、注文した品物を受け取るだけです。あの頃の喫茶店は人間らしいコミュニケーションを売っていましたが、今は純然たる珈琲ショップです。

街は、あの頃より豊かになったのでしょうか。豊かになっていなかったとしたら僕らは何をしていたのでしょう。

今また若い世代を中心に、少しずつ、でもあちこちで「等身大だった街」を復刻するような活動が始まっているようです。でも、その活動は、彼らの先輩たちが街を丸坊主にしてしまったからこその、彼ら自身のセルフ・サービスなのかもしれません。

何だか申し訳ない気もします。

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